福島県双葉郡浪江町の歯科医院|一般歯科・予防歯科

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2018年7月5日(木) 浪江町町長室にて、福島県浪江町副町長 宮口勝美(みやぐちかつみ)氏と、当院院長 豊嶋宏が対談いたしました。
豊嶋歯科医院8月1日OPENに向け、浪江町の地域医療・福祉・介護環境の必要性や健康促進の大切さについて、展望や構想等話し合う機会を頂きました。

まず、再開業に際して、今、思われるところをお聞かせください。

想いって言うほどの言葉では、簡単に言い表せないんですが、生まれ育ったところですし、こういう震災や原発事故に遭った後でも、いずれは町に戻りたいという想いは、ずっと持っておりました。
避難先の北海道での生活でもそうですし、ちょっと車で走ったりしても、比べてしまうのは、浪江町との比較なんですよね。
あっ、浪江町だったらこういう感じになるのかなとか、浪江町と比べるとここは大きいねとか。必ず対象が浪江町として出てきちゃうんですね。
浪江町は豊かな場所ですし、海も近い山も近い。その環境だけで、私はそれだけで宝だと思っていますし、是が非でも、年齢も年齢なんですけれど、まだまだ頑張れると自負してますので、やれるところまでは、やりたいなという想いでいっぱいです。

地域に根ざしてやってこられたので、地域に恩返ししたいとおっしゃっていましたよね。

微力ではありますけれど、浪江町の復興・再生に向けてちょっとでもいいので、お力添えができればと思っています。
わたしたちがもどることで、次に戻られる方の力になれればなという風には考えています。
今回、診療を再開するにあたりまして、双葉郡立の好間よしま診療所へ金曜日だけお手伝いさせていただくことになりました。以前も浪江町の津島診療所で9年近くお世話になりましたこともありまして、ちょっとでも双葉郡のため浪江のために働きたいな、という気持ちは強くあります。

町の帰還状況、復興の状況はどのような感じで進んでいらっしゃいますか?

今、町に戻っている方が、750名を超えて、ようやく800名に届くか届かないかという状況なので、帰ればいいというものではないんだけれど、目標のために最低でも1,000人の大台に乗ってくると、違うのかなという想いを持っている次第です。
今、豊嶋先生からあったように、医療福祉の充実をしっかりしないと、帰還の条件が満たされない可能性があると思うんです。
みなさんが浪江町に帰ってくる条件としては、医療福祉の充実、介護の充実を、条件の一番先に挙げられるので、そこをどうフォローしていくのかというのが、一番問題点として大きいと考えています。
ただ、震災前を見てみると、総合病院があったかというとそうではなくて、大熊町、双葉町の病院を核として、各診療医院がそれをフォローする形でやっていたこともありましたし。
特に双葉郡内は歯科医院は多かったんですよね。どちらかというとね。

そうですね。

浪江町も8院くらいだったかな。

そうですね。

それぞれに患者さんを抱えていたわけで、それがいま1院もない。町役場の職員も昨年からこちらに戻って仕事をしてますけれども、急に歯痛になって、歯医者の予約がいっぱいで1ヵ月後に来るように言われて、1ヵ月後にどこが痛かったんだか分からないというくらいの状況なんです。

予約が取れないので、もう治療はいいと、断念する方もいるそうですね。

痛くて痛くてしょうがないから歯科医院に行ったのに、予約が取れないから1ヵ月後に行く頃には痛くなくなっていて「どこ悪かったの?」「どこだかわかんない」という信じ難い状態になっているんですよ今。
だから、その問題を解消したいというのもあります。

南相馬市や、あるいは避難から戻って復興されて事業されている所、みなさんそれぞれ別々に対応はしているものの、思うようにいっていないという実情があります。
ですから、豊嶋先生に期待するところは大変大きいです。
これまでも各町内での医療機関の方々に対して、町での再開業促進というアプローチはしてきたものの、すでに他所で再開業した方は、なかなか戻ってこられない。あるいは、年齢的なことも含めて、自力で再開業するのは難しいと言う方もいらっしゃったりとか、こういうことも含めて、正直申しますと、医療機関の再開業は厳しいのが現実です。

今、診療所の先生に来ていただいてますが、この方はもう70歳を超えている方で、来られた当初には「いや、日野原先生*1を見ろ」と気合いが入っていたんですが、月日が経つと「次、誰かいないのか? 早く次を見つけてよ。いつまでも居るわけにはいかないぞ。」という後継者の話になったりします。
医師不足というのは、国や県に言わせるとここだけじゃないですからというのが常套句で、浪江町さんだけが居ないわけじゃないので、と言われるとどうしようもないんですけど、それでも専門医じゃなくても、必要最小限ちょっと診てもらえるお医者さんが居ないことには、みなさん安心できない。
幸い今年から、富岡町にふたば医療センター付属病院ができたんですけれど、そちらでも福島県立医科大学からの、医師派遣なので専門医が常駐している訳ではない状態なんです。先日も町役場の職員が急性膵炎で、診療所の診断で救急対応が必要だというので、ふたば医療センターで受け入れてくれるというので行ったんですよ。でも、結局いわきの病院まで行くことになったんです。急性膵炎という病気のためだったのか、理由は定かではありませんが、そういうこともあって、折角できた救急医療設備がある病院で、病状によっては他に対応を依頼しなければならないのは残念だという話もしたので、まだまだ医師不足による不安な点はあります。

そんな中で、豊嶋先生がよく浪江町での再開業を決断してくださったなぁ。

町役場に経済産業省から派遣されて来ていた職員さんが、豊嶋先生の元に熱心に通って、ある意味口説き落としてくださったんですけど、気持ちがぐらついていたところを、浪江町側に引いてくれたところがあるんですけれど、そのぐらいやらないと、戻ってきてなんてもらえないと思います。「あのー、どうですか?戻ってきてくれますかー?」なんて言い方をしていたんでは、とてもじゃないけど、戻れる状況じゃないので。
かといって、豊嶋先生がおっしゃったようにね、町に恩返ししたいとか、その方の心に頼るだけでもいけないんですよ。実際戻ってきたら営業ですから、ある程度採算が合わなかったらどうしようもないから、そういうところまできちっと手当ができて、戻っていただける形を作らないことには。
当初はね、みなさん、心で戻ってきてくださる方がいっぱいいるんですよ。気持ちでね。これなんとかしてやらなきゃとか、少しでも、お手伝いしてやんないととか、戻ってきてくださるんですけど、でも結局、われわれ役場もそれ以上のこと、できないじゃないですか。うまくいかなかったら、じゃあ、お金を出すよっていかないところがあるので、結局、ご自身でしょわなければならなくなるんですよね。
そこのところをしっかりフォローしていかないと、本当に帰って来たい、あるいは復興に寄与したいっていうお気持ちだけに頼っていたんでも、維持できない話ですので、そこは、なかなか町役場としても辛いところなんですよね。

個人の医療関係者で、浪江町に戻って、再開業するのは、豊嶋先生が最初になるのですか?

医療機関では、そうですね。
診療所を持っていた先生方も、避難先で開業されている方がいらっしゃいます。

浪江町で開業していた、私よりも下の世代の方は、他で再開業されてますので。

やっぱり7年経てばね。正直、どうにかしなきゃなんないという気持ちにもなってきているので。
かといって、これ以前に、帰って来てと言っても、帰ってこられなかったという話ですから、我々浪江町は去年の避難指示区域解除*2からようやくね、それまでは「町に帰って来たい」って言っても、帰るところがなかったわけだから。
そこからなので、どうしても他に比べても遅れちゃっているところがあるんですけど。

今、町民の方は、歯が痛い、歯の具合が悪いという場合は、どのように対応しているのですか?

南相馬に行かれる方もいれば、大体のみなさん単身赴任なので、避難先のかかりつけのお医者さんに行くとかという形で、対応しているのが現実です。

南相馬だと1ヵ月先までいっぱいだからという話ですね。

職員には居ました。
痛くて痛くて行ったんだけど、予約取れなくて、1ヵ月先って言われたからって、その頃もう歯痛くないんだよな。(笑)

どうなっちゃってたんでしょうね。歯が痛いのは、放っておいても直らないですよね。

炎症の逃げ場がないですからね。硬いものに囲まれたところの中で炎症を起こしているので。

昔、学生の頃は、お酒のジンに浸けて、歯痛を麻痺させたことがありますよ。
歯医者さんの予約が取れなくて、痛くて痛くてしょうがなくて、アルコールでもジンならいいかと思って、ジンを口に含んで。

それ、どうなんですか?

1日ならいいんですよ。

麻痺する感じですか?

いや、結局だめですよ。余計ひどくなっちゃった。

そうならないためのものでもあるんですが、小学校の場合、いわゆる検診などの状況はいかがでしょうか。

いま、乳幼児も含めてなかなか厳しい状況なんです。診療所の先生にお願いするわけにも行かなくて、個別に診ればいいというのでもなくて、集団検診を南相馬のお医者さんにお願いをしているような状況です。
こども園の関係で言うと、今、13人いるんですね、3歳児以上が。
だけど、保育士さんが居なくて受け入れられないんですよ。
そんなこともあって、子育てサロンを開いているんですけど、その時、12人くらい来ていることがあったり、浪江町で小さい赤ちゃんが何人かいるもんですから、乳児医療も含めた検診を含めてしっかりやっていかなければならない。
赤ちゃんが浪江町で誕生するまで、正直、もうちょっとかかると思っていたんです。ちょっと甘い見込みもあったんですけど、町役場の職員が最初に出産しまして。

おめでとうございます。

これは、乳児医療から徐々にやらなきゃだめだよね。というところからスタートしたので、目を覚まされたっていうか、まだまだ先だろうと思っていたことが、ぽんっと現実的にやらなきゃならなくなってきて、学校の検診もそうなんですけど。
今は南相馬と協議しながらやっているのが現状です。

豊嶋先生は、高齢者の単身者に、必要であればご自宅に往診することを考えていらっしゃるんですが、行政としてのお考えは?

歯科の場合、かかりつけのお医者さんがみなさんそれぞれにいて、どこでもいいっていう訳ではなかったと思うんです。あっちの先生上手いけど、こっちの先生痛くするから行かないとか。以前はかかりつけのお医者さんがいたところに、今まで診てもらっていないお医者さんのマッチングをうまくできるかどうかを含めて、考えていかないといけないと思うんです。
交通手段が無い方もいらっしゃいますから、往診していただけるとなると大変助かるというのがありますけれど、行政としてどんな風なご支援ができるか、早急に考えて行かなきゃならいと思います。

往診用に持って行ける機具類は揃えましたので、いつでもそういう往診の体制は整っております。

正直言って、寝たきりになって、家庭で介護されている方は、まだそんなにいないんです。まだ浪江町でそこまで対応できないというのがあるものですから。浪江町で滞在されている高齢の方でも、まだ自分のことができるというか、外出もできるという状況の方が多いので、ある意味では通っていただけるのかなというところはありますけれど、往診も含めて診療できるとなるとかなり違うと思います。

ホームページには、「浪江町と共に70年。家族ぐるみの歯医者さん」と入れたんです。地域のかかりつけの歯医者さんである豊嶋先生が再開業されるということを知っていただいて、ご存じの方は、豊嶋先生帰って来てくれてうれしい。という声もお聞きしたので、みなさんに知っていただけたらいいと思っています。

機会がある度に、豊嶋先生が再開業されますよという話はするんですが、まだまだ周知が足りないところがあるので、積極的にPRしていかなければならないと思います。

豊嶋先生は、オーラルケアという、口から老いていくので、歯が悪くなると食べられなくなるという、いわゆる健康長寿のための啓蒙もされています。
本来、行政の立場としては予防医療のためとはいえ医療費は使わない方がいいんでしょうけれど。

予防歯科という啓蒙は当然必要ですね。
歯がないというのは、しょうがい者にはならないというんですけど、食べられないというのは、これはひどいものですから。
震災の時も入れ歯を無くしちゃったことで、噛めない方が結構居たんです。阪神・淡路大震災の時も、しょうがい者になれないしょうがい者という話を消防署の方から聞いたことがあります。眼鏡が無いとか、補聴器が無いとか、入れ歯が無いとかというのは、しょうがい者には認定できないんだけれど、現実的に障害だよと。震災にあった時には、すごい苦労している人がいっぱいいるんだ。という話を聞いていて、確かにそうだと思いました。
私も実は、震災の次の日に部分入れ歯を入れる日で、それまでは仮歯だったんです。
(震災の日は金曜日。土曜日にまともな部分入れ歯を入れてもらえるはずだったんです。)裸足のまま取るものも取りあえず避難しちゃったので、食べるのが本当に大変だったです。うさぎのようにモグモグ…。あの時菓子パンくらいしかないから、なんとかしのぎましたけど、1ヵ月半くらい経ってからようやく部分入れ歯を入れてもらって、やっと良くなった!と、感じましたよね。

噛みにくいと柔らかいものを選びがちで、噛む機能がどんどん低下して、栄養が偏って体力が落ちてくる悪循環に陥りますよね。豊嶋先生の方がご存じなんですけど。

噛む力が弱ってくると、一気にがくっときますから。

生きてる楽しみが半減すると思います。噛めないとか食べられないとか。

歯周病も命を奪うとまで言われている訳ですから、月一回診察してもらった方がいい。歯の健康というのは非常に大切で、虫歯治療だけの歯医者さんじゃだめだなというのは、つくづく感じますけどね。

豊嶋先生が全部診てくださるし、なにより一対一で時間を掛けてゆっくりていねいに診てくださるので。

今、段々患者が多いせいか、ゆっくり診てくださる方も少なくなりましたよね。歯科衛生士もいて、じっくり診てもらった経験もあるんだけれど、今、待ち時間の方が長いような状況があります。

当面は完全予約制で、ひとりひとりしっかり診ていこうと考えています。

オーラルケアもいいですが、痛くて痛くてという患者さんもぜひ診ていただければうれしいです。

完全予約制ですが、「痛い」とか緊急を要する際は躊躇しないでまずお電話ください。診察時間を調整し、すぐ対応いたします。

救急車では運んでくれないそうですから、歯の痛みだけじゃ。

宮口副町長、豊嶋先生、お忙しい中、お時間を頂戴いたしまして、ありがとうございました。


脚注 *1:日野原先生 … 日野原 重明(ひのはら しげあき 1911-2017 105歳没)命の続く限り現場に立ち続けるという信念を貫いた、医師・医学博士。
*2:避難指示区域解除 … 東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故に伴い設定された、避難指示区域のうち浪江町と富岡町の居住制限区域及び避難指示解除準備区域が、2017年3月31日午前0時に解除された。